月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
でもまあ、いいか。

ジャラールさんの寝顔見れるし。


「クレハ。これを持て。」

ジャラールさんの寝顔に見とれている私に、ハーキムさんは、何かを投げた。

砂の上に、ドスッと言う音がする。

よく見ると、短剣だ。

「えっ!いいです、こんな恐ろしいモノ。」

「では、他に身を守る道具があるのか?」

「いや、ないですけど、」

「ならば、持っていろ。」


近くで焚き火がパチパチ鳴っている。

「……危険な事でも迫っているの?」

「そう思っていろ。」

「いつ?」

「たぶん先だとは思うが……備えておく分にはいいだろう。」


渡された短剣を持つと、想像以上に重い。

「使う時が来るの?」

「来ない事を祈るが、恐らく無理だろう。」

背筋が凍る。

これを使う時が来ると言う事は、相手も私に向かってこれを使うと言う事だ。

「どうして?ジャラールさんとハーキムさんは、誰かに狙われているの?」
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