月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「狙われているか。ある意味狙われているだろうな。」

「えっ?」

ハーキムさんの冷静な答え方が、余計現実味を帯びさせる。

「我々ではなく、宝石の方だ。」

「宝石……」

「あの石は、持つモノの願いを叶える。持っている限り何度でも。」

「ええっ!」


一度じゃなくて、何度でも。

それは欲しいって言う人が、たくさん出てきてもおかしくないわ。


「もちろん、砂漠の宮殿の民でもそれは知られていた。だからこそ、手に入れる者も吟味した。無論、身に付ける者もだ。私利私欲に使う者に渡れば、この世を破滅させる事も簡単だからな。」

また背中がゾクッとする。

ううん。

全身に寒気が走る。


ハーキムさんが言う通り、恐ろしい人にその宝石が渡れば、この私がトリップしてきた世界が破滅する。

そんなの嫌!


「……その宝石、取られないように気を付けないとね。」

「ああ。だが心配するな。襲われるとすれば、宝石を手にいれてからだ。」
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