手をつなごう
里沙の声に、顔を上げると、視線が私の後ろに向いていた。
何かが近づいてくるのか、目を瞬かせている。
「さっき聞くの忘れてました。どこの学科?」
斜め後ろから尋ねられた質問に、振り向く。
”有名な大くん”が立っていた。
「……英米語学科三年、です」
とっさに出た嘘。里沙が咳込むのが聞こえた。
だってあそこなら人多いし。
「これ、連絡先。暇になったら連絡してください」
にこにこと小さく二つに折られた紙を渡された。
そして本人は軽やかに行ってしまう。
「ちょっとどういうことなの、亜須美!」
「……あたしの方がそれ訊きたい……」
静かに暮らしていたあたしを彼が見つけ出したのは数日後の話。