手をつなごう
文字の上
幼い頃、身体が弱かった。
少し走るだけで息切れして、先生に止められた。
でも、本の中でならどこにでも行けた。
ぱっと目の前に手が出された。ハイタッチではない、でも挨拶。
「久しぶり。ちょっと待って、これだけ読む」
「急がなくて良いよ、ごゆっくり」
手を引っ込めて、乙樹は自分の持ってきていた文庫本を開いた。
わたし達は各々作業を終えて、図書館を出て二階のMULCへと移動する。
「暑いな、やっぱり」
「まあ、夏だからね」
しかもわたし達はお互いにスーツを着ている。四年生、就活真っ只中。