手をつなごう
気付いた先輩が話しかけてくれた。
「遅くまで練習してるんですね」
「この世界は素晴らしい、戦う価値があるって言葉があるくらいだ」
「ヘミングウェイの言葉ですね」
きょとんとした顔をする先輩に、あれ違ったっけ、と静かに焦る。
「よく知ってる。柏梨田、これからバイト?」
「あ、はい」
そうだ古本屋のバイトだった。私は腕時計を見て時間を確認する。
「正門まで歩いてて」
そう言って、フェンス越しの先輩が視界から消えた。
私は言われた通り、元の道へ戻る。
図書館はライトアップされていて綺麗だ。暗くなっても全然寂しくはない。