手をつなごう
乙樹は日差しに目を細めている。
「愛していない人間と旅に出てはいけない」
「by アーネスト・ヘミングウェイ」
知っていたらしい。流石、成績上位者なだけある。
わたしも空を見上げる。青が目に飛び込み、自分も青くなるんじゃないかと思った。
ふっと校舎の影に入る。
その青が鮮明になり、思わず手を伸ばした。
「今日の空、とても青い」
「昨日の空も青かったよ。何してんの?」
「手が届くかなと思って」
乙樹に伸ばした手が掴まれて引っ張られる。
「どうしたの?」
「澪が飛んで行かないように」
手をつないで行こう、と笑った。
手をつなごう END.