桜の花が咲くまでは
甘いカフェラテをカウンターテーブルに置いて、もう何度目か分からないほど読み返している大地からのメールの画面を開いた。あの日私がメールを送って数時間後に大地から届いたものだ。
ガラス越しに見える街路樹の葉は、ほんのりと秋の色を纏い始めていた。
桜
久しぶり。メールありがとう。嬉しかったよ。それとごめん、今まで何も連絡しなくて。
忙しかったっていうのもあるけど、ちょっと怖かったんだ。
俺は、桜の大学生としての時間を縛るのが申し訳なくて、待ってて欲しいって言えなかった。けど、やっぱり待っていてほしいと思ってた。もし桜が俺のことなんてとっくに忘れてしまってたら、
連絡してそんな現実を知ってしまえばもう頑張れないと思った。
だから、桜は俺を待っててくれてるって思い込んで、現実を確かめるのは全部終わってからにしよう、と。
それが桜を不安にさせてしまったみたいだね。
先に言わせてごめんね。俺の弱さのせいで、いらない勇気を出させた。
待っていてほしい。頑張れって、桜に応援してほしい。
死ぬ気で頑張って、合格して、桜の笑顔を咲かせるから。
それまで、待ってて。
大好きだよ。 大地
end.
最後まで読んでいただきありがとうございました。