替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
良いことと悪いこと
「……様、ご機嫌麗しゅうございます。」
「……様、今日はとても良いお天気でございますね。」
生地は肌に吸い付くような感触で、歩く度にドレスの長い裾が床を擦る音がする。
マーブル模様の床は冷たい石で作られ、綺麗に磨き上げられている。
長い廊下の真ん中には、ふかふかした緋色の絨毯。
見上げると、そこには美しい女神や天使の天井画が広がる。
「……会いたかったわ…とても……」
白い、か細い指…
腕には青い宝石の付いたバングルが輝いている。
その手が私に向かって差し伸べられて…
私は、なぜだかその手を握り締めることを躊躇する。
*
「はっ!」
目が覚めて、今見ていたのが夢だとわかって安堵する。
でも、まだ鼓動は全速力で駆けた時みたいに速い。
特に怖い夢というわけではないのだけれど、何かものすごく心がざわざわした。
多分、このところ、同じような夢を何度も見たせいだ。
何度も見るってことは、何か意味があるんじゃないかって気になってしまう。
でも、それが何なのかは全くわからない。
それと、夢の中で言われてる言葉が、どうしても聞き取ることが出来ない。
きっと、それは私の名前だ。
でも、『紗季』とは言ってないように思える。
もちろん、『内山』でもない。
(ま、いっか……)
考えてもわからないことは、考えるだけ無駄というものだ。
鼓動も落ち着き、私はベッドから起き出した。
「……様、今日はとても良いお天気でございますね。」
生地は肌に吸い付くような感触で、歩く度にドレスの長い裾が床を擦る音がする。
マーブル模様の床は冷たい石で作られ、綺麗に磨き上げられている。
長い廊下の真ん中には、ふかふかした緋色の絨毯。
見上げると、そこには美しい女神や天使の天井画が広がる。
「……会いたかったわ…とても……」
白い、か細い指…
腕には青い宝石の付いたバングルが輝いている。
その手が私に向かって差し伸べられて…
私は、なぜだかその手を握り締めることを躊躇する。
*
「はっ!」
目が覚めて、今見ていたのが夢だとわかって安堵する。
でも、まだ鼓動は全速力で駆けた時みたいに速い。
特に怖い夢というわけではないのだけれど、何かものすごく心がざわざわした。
多分、このところ、同じような夢を何度も見たせいだ。
何度も見るってことは、何か意味があるんじゃないかって気になってしまう。
でも、それが何なのかは全くわからない。
それと、夢の中で言われてる言葉が、どうしても聞き取ることが出来ない。
きっと、それは私の名前だ。
でも、『紗季』とは言ってないように思える。
もちろん、『内山』でもない。
(ま、いっか……)
考えてもわからないことは、考えるだけ無駄というものだ。
鼓動も落ち着き、私はベッドから起き出した。
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