替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「……おはようございます。」

「おはよう。良く寝てたな。」



何のお酒かわからないけど、その晩はマリウスさんの言う通り、本当に良く眠れた。
顔を洗って戻って来たら、フェルナンさんがいなかった。
私が起きた時からいなかったから、トイレにでも行かれたのかと思ってたのだけど…



「あの…フェルナンさんは?」

「あぁ、彼には、一足先に行ってもらった。
ちょっと準備したいことがあってな…」

「そうなんですか…」



準備したいことって、一体、何なんだろう?
気にはなるけど、思い当たることは全くないし、わからない。
私はマリウスさんと朝食を食べて、宿屋を後にした。



「あ、来たぞ!」



宿を出て街道の方に歩いて行くと、そこには数人の人がいて、すぐに馬車がやって来た。
私は初めての馬車に乗り込んだ。



初めての馬車はちょっと嬉しいけれど…
狭いし、思ったよりも揺れが酷い。
道が悪いせいなのか、それとも車輪のせいなのか??



「馬車は初めてか?」

「は、はい。」



窓の風景を見るようなゆとりはない。
見たら、さらに酔いそうだから。



黙ってても酔いそうだから、私はマリウスさんと他愛ない会話を交わし、早く馬車が停まってくれることを祈っていた。
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