替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「シャキア様、あなたはしばらくここで過ごして下さい。」



王女様の部屋の書棚がすーっと横にずれると、そこには細い通路が現れた。
壁の両脇には、ところどころに明かりが埋め込まれてるから、移動には困らない。
道は何か所か曲がり角があり、それらを何度も曲がりながらけっこう歩いた。
すると、突き当りに扉が現れた。
鍵はかかっておらず、扉はすぐに開いた。



「ここは?」

「隠し部屋です。
ここのことは、シャルア様と私とシャルア様の侍女しか知りません。
申し訳ないのですが、ここからは絶対に出ないで下さい。
あなた様の存在は、知られてはいけないのです。」



なんだかちょっといやな気分だけど、それは仕方ないことなのかもしれない。
なんせ、私は、生まれなかったことにされてる存在なんだから。
でも、大丈夫なのかな?
関所のおじいさんとか、サンドラさんのお付きの人も私の顔を見てるはずだけど…



「マリウス様は、明日の朝、お連れします。」

「……わかりました。」

「すぐにお食事をお持ちします。」

そう言って、サンドラさんは部屋を出て行った。



部屋の中に一人取り残されて…
頭の中で、さっきのことがぐるぐると回ってる。



私がこの国の王女…?
私には姉がいて、だけど、その人は明日をも知れない命で…
この国のため、私は見も知らぬ人と結婚させられる。
そうしなければ、この国は滅びてしまうから…



やっぱり、まだ信じられない。
考えれば考える程、信じられない。



混乱し過ぎて、なにがなんだかよくわからない。
私の頭はすでにパンク寸前だ。
重い頭を抱え、俯くことしか私には出来なかった。
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