替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「あの…さっきは、鏡から出てこられたのですか?」

シャルアさんが眠ったのを見届け、私とサンドラさんは居間に移った。



「はい、シャルア様は隠し通路をお歩きになる体力はないと思い、鏡の道を作りました。」

やっぱりそうだったのか…
ここに来て、初めて魔法ってものを見たよ。



「後はここで一か月間過ごせば良いのですね?」

「はい、そうです。
それと…シャキア様…この一か月の間に少し目方を減らして下さい。」

「え?痩せるってことですか?」

「はい。
シャルア様がお元気になったという風に見せかけるにしても、たった一か月で急に元気になってしまわれるのはあまりにも不自然です。
ですから、シャキア様も今より少しお痩せになられて下さい。」

「わ、わかりました。」



確かに、サンドラさんの言う通りだ。
私は、こっちに来てしばらくは体が痛かったけど、その後は健康そのものだもの。
たった一か月でそこまで元気になるのはおかしいもんね。



(ダイエット、頑張らなきゃ!)



「ところで、サンドラさん…
私、こちらの世界に来た時、酷く体が痛くて起き上がれなかったんですが、それはどうしてですか?」

「それは、おそらくロゼッタ石が足りなかったせいでしょう。」

「ロゼッタ石…?」

「はい、異界とこことを繋ぐ門を動かすために必要なものです。
本来、あなた様はこの城の門に来られるはずでした。
ですが、ロゼッタ石が足りなかったせいで、ここではない場所に飛ばされ、そして体にも大きなダメージを受けられたものと思われます。」



なるほど、そういうことか…
ロゼッタ石っていうのがどんなものかは知らないけれど、その燃料が足りなかったせいで、このお城まで来られなかったんだ。



(あ……)



お父さん達は、私がお城に着くと思ってたから、私に何も言わなかったんだ。
お城の人がちゃんと説明してくれると思って…
それに、お父さん達は、私がどうして呼ばれたかも知らないはずだもの。
何か緊急のことが起きたってことと、この世界に呼ばれたことしか知らなかったんだよね。


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