替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「そうですね。
確かに、好きだと思った人はいたかもしれません。」

「えっ!?」

「あ、心配しないで。
もうその人との縁は切れましたから。」

「……どういうことです?」



私はフェルナンさんのことを話した。
ここに来て、弱ってる私を助けてくれたこと。
その後も私の面倒をみてくれたこと…
話す度に、フェルナンさんのことを思い出す。



「それでは、あなたに害が及ばないようにと、その方は身を引かれたのですか?」

「そうですね。
そうでなければ……」



そうじゃなかったら、私はきっと今もフェルナンさんの傍にいたはずだ。
そしたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
いや…フェルナンさんが一緒でもそうじゃなくても、アンセルさんがリゴレットにいた時点で、私はきっとここに来ていたはず…



(運命には逆らえないってことだね…)



もしも、私達がマリウスさんに出会わなければ…
フェルナンさんはマリウスさんに私を預けることはなかったはずだ。



そしたら、私はフェルナンさんと今も一緒にいられたかもしれない。
それとも、そうはならなかっただろうか?
どんなに強く願おうと、運命は人生を操作してしまうのだろうか?



もしもそうだとしたら、抗うだけ無駄ってことだ。



(そう…運命は受け入れなきゃ…)



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