替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
side マグダナ
(なぜ…!?なぜ、シャルアがあのように回復を…!?)



たった一月程の間に、あのシャルアがあれほど回復するなんて、ありえないことだ。
あの毒は、決して治すことは出来ない。
一定の量を摂ってしまえば、毒をやめても蝕まれた臓器は衰弱し続け、やがては死に至る…
ヴァリアンの一定の場所にしか生息しないある植物…
それだけでは特にこれといった害はなく、むしろ、鎮痛効果のあるものだが、いくつかの植物と混ぜるとそれは猛毒となる。
その調合を知るのは、ごく一部の薬師のみ。



私は復讐のため、その毒をこの国に持ち込んだ。
私の幸せをすべて奪ったこの国を滅ぼすために…



大巫女アーリアの神託さえなければ、私はシルヴェールと結婚することになっていた。
私達が幼い頃から、お互いの国王は二人の結婚を考えていた。
当然、私達もそう考えていた。
そろそろ婚約をしようかという時に、シルヴェールの王太后が亡くなり、喪に服しているうちに、アーリアの神託が下った…



私には、それを断ることなど出来ない。
いっそ、死んでやろうかと思ったけれど、国のことを思えばそんなことは出来るはずもなく、私はリゴレットの王子と結婚した。
私から幸せを奪った王子が…この国が憎かった。
見当はずれの憎しみかもしれないが、私は憎むことを支えにするしか、自分の辛い人生を生き抜く術を知らなかった。



リゴレットを滅ぼす…その目標が、私の生きる糧となった。

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