替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
それからも、私は少しずつ回復して行く振りをした。
それはあまり早くでは不自然だし、かといって、それほど時間をかけることも出来ない。
結婚が決まっているのだから。



お城に戻って来て、十日が経った頃…
私は、サンドラさんやレベッカさんに支えられながら、ほんの数歩、歩いて見せた。
それをご覧になった時の陛下は…人目もはばからず、涙を流して喜ばれた。
こんなに良い人に、騙すような真似をして…私の心は酷く痛んだけれど、これはやらなくてはいけないこと。



(陛下…申し訳ありません。)



心の中で頭を下げながら、私はシャルア王女を演じ続けた。



王妃様も何かを言って来られることはなかった。
やはり、サンドラさんの推測通りだったようだ。
私が歩く様子を見て、王妃様は喜ばれていたけれど、その目は陛下のものとは違い、とても冷ややかなものだった。
毒を盛ったのが王妃様だとという推測が、本当のことのように思えた。
それとも、そんな先入観があるから、王妃様を悪いイメージで見てしまうのか…
それはまだわからないことだけど、とにかく気を許してはいけない。



(慎重に…慎重に…)



私は自分に言い聞かせた。


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