替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「……シェザー歴は長いのか?」

「いえ…それほどではありません。」

「こやつ…こしゃくな…」



私が先攻で、ゲームは始まった。
本来ならば、シェザーは後攻の方が有利に進む。
ルーサーは、私にどちらが良いかと訊ねて来た。
おそらく、私が後攻を選ぶと思っていたのだろう。
先攻を選んだ時、彼は驚いたような顔をした。



そして、ゲームは私が優勢のまま進んだ。
ルーサーも確かにうまい。
だが、きっと、ひとりで二役をやっていたことが役に立ったのだと思う。



「シェイズ!」

私の勝利でゲームは終わった。



「……私に勝つとはたいしたものだ。
しかし、今のはまぐれというやつかもしれぬ。
もう一度、対戦してくれ。
今度は私が先攻だ。」

「……承知しました。」



私達は、二度目の対戦をした。
今回は、最初よりもさらに簡単に、ルーサーを負かすことが出来た。



「……悔しいが、私の負けだ。
どうやらまぐれではなかったようだな。」

「対戦、どうもありがとうございました。」

「そなた…貴族か?」

「……はい。」

ルーサーがそう思ったのなら、それで良い。
私は嘘を吐いた。



「名はなんと申す?」

「フェルナン……フェルナン・カナールと申します。」

私は咄嗟に思いついた名前を名乗った。



「この国へは旅行か?」

「はい、人生経験のためのあてのない旅をしている途中です。」

私はさらに嘘を重ねた。

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