替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
side フェルナン
「本当に大丈夫なのですか?」

「そなたはやけに心配性なのだな。
友人も連れて行くと言ってあるから、何の問題もない。」



そろそろ、ヴァリアンを離れようかと考えていた時、私はリゴレットで開かれる舞踏会のことを聞いた。
サキの回復を祝う舞踏会だとのことだった。
しかも、ルーサーが私に一緒に行こうと言い出したのだ。



確かに、サキには会いたい。
話せなくとも、サキの姿を見るだけで良い。
だが、その反面、そんな自分がとても未練がましく思えた。



サキと私は、すでに住む世界が違う。
どれほど辛くとも、サキはもう諦めなければならない相手となってしまったのだ。
しかも、私はダンス等踊ったこともない。



「私はダンスが苦手ですから、遠慮しておきます。」

「何を言っている。ダンス等容易いものだ。
侍女と練習すれば良い。
舞踏会まで、まだ日はあるのだから。」



結局、私はダンスを習うことになってしまった。
ダンスの踊れない貴族等、いるだろうか?
こんなことから、私の正体がバレるのではないかと心配したが、それは杞憂に終わった。



覚えが良いと侍女におだてられ、私は調子に乗って、楽しくダンスの練習を続けた。



考えてみれば、ルーサーに連れて行ってもらわなければ、舞踏会には行けるはずもなかったのだ。
マリウスにも招待状は届いているかもしれないが、あんな別れ方をしたのだ。
今更、一緒に連れて行って欲しいとは言い難い。



(サキの姿をしっかりと目に焼き付けて来よう。)



きっと、これは天から与えられたプレゼントなのだ。
私はそう思うことにした。
< 202 / 257 >

この作品をシェア

pagetop