替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「どうもありがとうございました。」

「こちらこそ、ありがとうございます。」



ルーサーさんの足を踏むこともなく、それなりに踊ることが出来て、内心ほっとした。
ルーサーさんと踊ったことで、その後も踊って下さいと言って来る人が続いたけれど、私の体調を気遣い、そのあたりのことは陛下がうまくさばいて下さった。
本当は、体力は全然まだ大丈夫なんだけど。



時間を空け、何人かの人と踊った。
ルーサーさんの弟のマーカスさんとも…
マーカスさんも優しくて気さくな感じの良い人だった。



最初はとにかく緊張しかなかったけれど、何曲か踊ったり、みんなの踊るのを見ているうちに、私はいつの間にか舞踏会を楽しんでいた。
煌びやかに着飾った王族や貴族の集まるこの光景は、まさに夢の世界だ。
元の世界では、とても体験出来ることじゃない。



(シャルアさんも楽しんでたら良いけど…)



楽しい時間は、早くに過ぎるもの…
いつしか、舞踏会も終わりに近付いていた。



「シャルア…どうする?
最後に一曲踊るかい?」

「はい、そうですね。」



陛下がお声をかけられると、私の周りに何人かの男性が集まった。
その中には、フェルナンさんの姿も…



「お願いします。」



私は、フェルナンさんに手を伸ばした。
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