替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
フェルナンさんの体に密着した途端、鼓動が速くなった。
恥ずかしくってどうにかしたいけど、どうにもならない。
でも、フェルナンさんから伝わって来る鼓動も私と同じように速くて…
まるで、私の鼓動がフェルナンさんに移ったみたいだった。



「フェルナンさん、今日はなぜここに…?」



私は一番気になっていたことを訊ねた。



「……君に会いたかったから。」



(……え?)



その一言が私の心を震わせた。
嬉しくて、胸がいっぱいで…泣きそうになるのを必死に堪えた。



「これでもう思い残すことはない。」

「フェルナンさん……」



「ルーサーもマーカスも、とても良い奴だ。
どうか幸せに……」



頑張って我慢してたけど…
どうにも我慢しきれずに、涙が込み上げてしまった。



「フェルナンさん…私……」



止めようと思うのに、涙がどうしても止まらない。
皆が心配するから…泣いちゃいけないのに…



ターンする時に、私は手で涙を拭った。
堪えなきゃ…何とか止めなきゃ…



曲は、エンディングに近付いている…



「フェルナンさん……
愛しています。これからもずっと……」



私は、フェルナンさんの耳元で囁いた。
今まで言えなかった本当の気持ちを…



お辞儀をするフェルナンさんの瞳から、一粒の涙が流れた。
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