替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
秘話
「そうじゃない。この駒は斜めには動けないんだ。」

「は、はい!わかりました!」



舞踏会の後、王族たちは思い思いの滞在をして、それぞれが国に戻って行った。
ルーサー兄弟は、陛下に引き留められ、一番長く滞在した。



その間、私やマリウスさんは、毎日のようにルーサーさんからシェザーを教え込まれた。
マリウスさんはそれがいやで、予定よりも早くガザンに帰ってしまった程だ。
そんなわけでガザン再興のお話も、あまり聞けなかった。



このシェザー熱さえなければ、ルーサーさんは本当に良い人だと思う。
優しいし、明るいし、一緒にいて楽しい。
それを言えば、マーカスさんもそうなのだけど、どちらかというと、私はルーサーさんの方が気が合うような気がした。
けっこう長い時間を共に過ごしたおかげで、私達はけっこう心を開いて話が出来るようになっていた。



「シャルア…率直に訊ねるけど…
私やマーカスに想い人がいたって話は知ってたかい?」

「え……ええ……」

「なんだ、知ってたのか…」

「はい、誰からかは忘れましたが、聞きました。」

「そうか…こういう噂はすぐに広まるもんなんだな。
確かに、その噂は嘘ではない。
だが、私は、そのことは割り切った。
もしも、君と結婚しても、決して君に辛い想いはさせないから、安心してくれ。」

「は、はい。」

多分、その言葉に嘘はないと思う。
今までの印象から、ルーサーさんは信頼出来る人だと思ってる。



『本当に好きな方は、側室にされるのですか?』



訊いてみたかったけど、さすがにそれを訊く勇気は私にはなかった。
もしそうなっても、私は嫉妬はしないと思う。
ルーサーさんの気持ちもわかるし…
愛し合ってるのに引き離されるなんて、とても辛いことだもんね…
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