替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「そのことなら、心配はありません。
王位継承者はいらっしゃいます。」

「サンドラ…それは本当なのですか?
誰がいるというのです?」

私が知りたかったことを、シャルアさんが代わりに訊いてくれた。



「シャルア様…アレクセイ殿下を憶えてらっしゃいませんか?」

「アレクセイ…殿下…ですか?」

「シャルア様はまだお小さかったから、憶えてらっしゃらないかもしれませんね。
アレクセイ殿下は、陛下の弟君です。
つまり、シャルア様の叔父様にあたられる方です。」

「叔父様…?やはり思い出せません。
どのような方なのですか?」

「……とてもお優しいお方でしたよ。」

サンドラさんの言葉が過去形だったのが妙に気になった。



「あの…舞踏会にも来られてましたか?」

嫌な予感を感じながら、私は敢えて質問した。



「いえ…アレクセイ殿下はもうずいぶん前に亡くなられました。」

やはり思った通りだ。
亡くなられてたから、過去形だったんだね…
まだ亡くなられるようなお年ではないと思うのだけど…



「アレクセイ殿下はどうして亡くなられたのですか?」

「ご病気でした。
元々、病弱なお方でしたが、ご結婚なされ、お子様も誕生し…
もしかしたら、体調も良くなられるのではないかと思われたのですが、持病が突然悪化されて…」

「……そうだったのですか。
でも、おかしいですね。
私は、叔父様のお見舞いに行った記憶すらありません。」

「それは……」

サンドラさんは急に口をつぐみ、その顔には暗い影が差した。
< 223 / 257 >

この作品をシェア

pagetop