替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
side ヒルダ
「一体、どうなってるのだ。
ルーサー様はたいそうご立腹だぞ!」

「ハウゼン殿、此度の神託がおかしいことは、あなた様もご存知のはず。
ですから、皆、夜を徹して、その原因を究明にあたっているのではありませんか!」



魔法使い長のハウゼンと、クランブルがやりあっている。
なかなか結果が出ないことで、魔法使い達は、このところ、皆、苛立っていた。



此度の神託が出ない理由に気付いているのは、おそらく、このわしだけだろう。



いや、わしとて、最初はなかなか信じられなかった。
だが、少しずつ、わしの推測が正しいと思えるようになっていった。



ここは、わしが動かない限り、おそらく解決はしないだろう。
しかし、事は慎重を要する。
秘密裏に、動かねばならん。



(おそらく、これがわしの最後のお勤めとなるだろう...)



大変なお役目だが、やらないわけにはいかない。
このヴァリアンのために。



「ハウゼン様、すみませんが、明日からしばらくお休みをいただきます。」

「ヒルダ、何を言っておる。
今がどういう時か、そなたもわかっておろう?」

「はい、ですから、お休みをいただくのです。」



ハウゼンは文句を言っていたが、わしはそれを無視して、部屋を後にした。
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