替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「シャキア...そろそろ私は去ろうと思います。」

「去る...?どこかに行かれるのですか?」

シャルアさんは、人差し指で上を指し示した。
私にはその仕草の意味がわからなかった。



「二ルジェ様のお傍に...」

小さな声に、私は反射的に声をあげた。



「な、何を言ってるんです!」

「私はもう何も思い残すことはありません。
あなたのおかげで、私は心穏やかに逝くことが出来ます。」

「ば、馬鹿なことを言わないで下さい!」

「シャルア...私は怖いのです。
女の子の双子は不幸を招く...
私が生きていたら、何かが起きるかもしれません。
せっかく護られたリゴレットに何事かが起きるかもしれない。
私はそれが一番怖いのです。
だから、どうか、私に毒を下さい。
じわじわとくるものではない、即効性の毒を...」

「シャルアさん!」

シャルアさんが元気なら引っぱたいていたかもしれない。
怒りと悲しみで体が震えた。



「そんなこと、絶対に許しません!
あなたには生きてもらわないと!一日でも長く...」

「シャキア...あなたにわかりますか?
自分のせいで何か悪いことが起きるかもしれないと怯えながら、痛みに耐え、ただ死を待つ日々の辛さを...
動くことさえ出来ず、この部屋でひとりで過ごす心細さを...」

「シャルアさん......」

シャルアさんの言葉に打ちのめされた。
シャルアさんの心情を思うと心が痛くて、何も言えず、ただ涙だけが流れ続けた。


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