替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「明日、ブラッサの町に一緒に行かないか?」

「え?町に…?」

ある日、フェルナンさんが唐突にそんなことを言い出した。



私はまだこの家の周辺しか行ったことがない。
ここから一番近いランダスの村というところさえ、まだ行ったことがないというのに…
でも、確かに興味はある。
ただ、その反面、不安もある。
まさか、私が違う世界から来たことを見抜く人はいないとは思うけど、やっぱり、あまり目を引くことはしたくないから。



「あ、あの…私、どこかおかしなところはありますか?」

「おかしなところ?……どういうことだ?」

「え?あ、大丈夫です。なんでもありません。」

私がこの世界の者じゃないとバレたらまずいと思って訊いたのだけど、フェルナンさんの言葉を聞く限り、私は特におかしなところはなさそうだ。



(じゃあ、大丈夫よね?)



「靴を買わなきゃな。」

「え?あ、ありがとうございます。」



フェルナンさん…靴がぶかぶかなこと、気にかけててくれたんだ。
そっか、それで私をブラッサの町に連れて行ってくれるんだ。
やっぱりフェルナンさんって優しいな。
そう思うと、胸の奥がじんわりと熱くなった。
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