替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「じゃあ、靴を見に行こう。」

「……はい。」



薬屋さんに薬草を卸して、そこでお茶を出してもらった。
なんだか香りの良い紅茶みたいなもの。
フェルナンさんの家では、水しか飲んでなかったから、ちょっと気分がほっこりした。



あたりは少しずつ日暮れに近付いていたけれど、商店街はまだ十分賑わっていた。
見たことのないような品物もたくさん並んでいて、私はそれらを興味津々で眺めていた。
これが観光かなにかで、お金もそれなりに持ってたら、きっと楽しいショッピングが出来ただろうに。



「あ、あそこに靴が売ってるみたいだ。」



フェルナンさんの指さす先に、靴屋さんがあった。
並んでいるのは、今、履いているのと似た感じの靴だ。
色も地味なものしかないし、どれも飾りの一つもついてない愛想のないデザインだ。
私のいた世界では、カラフルな色や可愛いデザインのものがいっぱいあったのに。
って、そんなことを思っても仕方がない。
ここにはこれしかないんだから。
靴を手に取って見ていたら、フェルナンさんが私の腕を不意に掴んだ。
しかも、けっこう強い力で。



「あっちにもあるから、向こうのを見てみよう。」

「え?あ、はい。」

まだ見てる途中だったけど、私は素直にその言葉に従った。
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