替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「腹が減っただろう?
多分、もうそろそろガザンに入ると思う。
酒場でもあれば、そこで何か食べて休めるんだがな。
ただ、ガザンは治安が悪いって話だから、気を付けろよ。
私の傍から絶対に離れるな。」

「は、はい。」

遠くに、小さな民家の明かりらしきものが見える。
国は滅んでも、住んでる人はいるみたい。



国境みたいな所があるのだろうと思ってたけど、それらしきものは何もなかった。
鬱蒼とした森の中は真っ暗で、なんだか不気味…
こんな所で、悪い奴にでも出会ったら、どうにもならない。



「止まれ…!」



不意に響いた低い声に、私は心臓が止まりそうになった。
私のネガティブな想像が現実になってしまったのだから。



お酒のにおい...
金属の触れ合う音…
まさか、それって……
嫌な汗が、背中を伝う…



「おとなしくしろ。
おかしな真似をしたら、痛い目に遭うぜ。」

「……サキ、言う通りにしろ。」

「はい。」

こんな状況で、抵抗なんて出来るはずもない。
足もがくがくで立ってるだけでも大変なんだから。



私達は為す術もないまま、後ろ手に縛られて、誰ともわからない奴らに連れて行かれた。
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