替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「こいつは掘り出し物だ。」

一人の男が声を上げた。



私達は、お城のようなところに連れて行かれた。
だいぶ朽ちてはいるけれど、きっとここはお城だったんだと思う。
悪党たちの根城になってしまったとは、王様も浮かばれないね。



この人たちは、私達をどうするつもりなんだろう?
私のことを掘り出し物だって言ったってことは…
まさか……人身売買!?
私…貴族の慰み者とされてしまうの!?



恐怖と絶望に、目の前が暗くなった。



「こりゃあ、貴族のエロばばぁに高値で売れるぜ。」

「いや、男にも売れそうだ。
ジェロームの旦那なら、高値で買ってくれそうだ。」



(……え!?)



どうやら、『掘り出し物』は、私じゃなくてフェルナンさんみたいだ。
確かに、フェルナンさんは超イケメンだけど…



「こいつはどうする?」

「そうだなぁ…特に別嬪ってこともないし、貧相な体をしている。
残念だが、これじゃあ、高くは売れないな。」



本人を前にして、なんて失礼なことを言うんだろう。
腹は立ったけど、悪党に文句を言える程の勇気はない。



私は、心の中とは裏腹に、ただへらへらと微笑んだ.
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