替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「ここでしばらくじっとしてろ。」



私達は、地下牢に連れて行かれた。
暗くて空気がじっとりとしていて、黴のようなにおいがする。
牢の中には、すでに人がいた。



「やぁ、新入りさん。」



薄暗くて顔は良く見えなかったけれど、声の雰囲気ではまだ若い男性のようだった。



「君は、どうしてこんな所に?」

「その前に、名前くらい言わせてくれよ。
俺は、マリウスだ。」

「そうか、私はフェルナン…
そして、こっちは妹のサキだ。」



(妹……?)



「は、初めまして。サキです。」

なぜ、フェルナンさんがそんなことを言ったのかはわからなかったけど、とりあえず、私も話を合わせておこうと思った。



「兄妹で捕まるとは、あんたらも相当なドジだな。
どこから来たんだ?
ガザンは初めてなのか?」

「あぁ…
ガザンの治安が悪いことは聞いてたが、まさかこんな目に遭うとは思わなかった。」

「ガザンで、深夜、出歩くなんて、まともな人間のすることじゃない。」

「確かにそのようだな。」

そう言って、フェルナンさんは失笑した。
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