替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「静かにな……」

マリウスさんの言葉に、私達は頷く。



地下には、見張りさえいなかった。
明かりがないから、あたりに注意をしながら、少しずつ歩く。
マリウスさんは、この城のことを割と知ってるのか、迷いもせずに進んで行く。
しばらく進むと、男達の笑い声が聞こえた。



「奴ら、玉座の間を使ってるみたいだな。
王にでもなったつもりか…」



マリウスさんの呟きに、私は小さく頷いた。



城を出るのは、思ってたよりもずっと簡単なことだった。
あまりにもスムーズで、何か裏があるんじゃないかって思った程だ。



「ここから、ジャミアの方に行った方が良いな。」

「いや、私達は南に進みたいんだ。」

「なぜだ?ジャミアの方に進んだ方が安全だぜ。」

「それはわかってる。
でも、私達は南に用があるんだ。」

「そうか……
じゃあ、俺も一緒に行こう。」

「えっ!?」
「えっ!?」

私とフェルナンさんの声が重なった。



「どうして、君が?」

「俺は、別にあてのある旅をしてるわけじゃない。
牢屋で知り合ったのも何かの縁だ。
一緒に行っても良いじゃないか。
それに、俺と一緒だと何かと便利なこともあると思うぜ。
これでも、一応、武器が扱えるからな。」

マリウスさんはそう言って微笑んだ。
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