替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「……何か見えますか?」

「それが…残念ながら、ここからではマリウスのいる部屋が見えない。」

フェルナンさんは背伸びをし、さらに窓の中をのぞいた。



「ずいぶんと無作法な男だね。
人の家の中をのぞくなんてさ。」



急に聞こえて来たしゃがれた声に、私はびっくりして振り向いた。
そこには、さっきの魔法使いのおばあさんが立っていた。



「……す、すみません。」

「なぜ、こんなことをした?」

「実は……」



「フェルナン…なんで、ここに?」

フェルナンさんが話そうとした時、マリウスさんが外に出て来た。
それを見て、フェルナンさんはバツの悪そうな顔で苦笑した。



「なんだ、おぬしたちは知り合いか。」

「はい、実は、マリウスがあなたの所に行くと聞き…
ちょっと心配になって、様子を見に来たんです。」

「心配だと?
わしが、この男に何か危害でも加えると思ったのか?」

「いえ…そういうわけではないのですが…」

フェルナンさんは、言葉を濁した。



おばあさんはそんなフェルナンさんを見て、そのまま私に視線を移し…
私の腕のバングルを見て、目を丸くした。
それは、本当にすごくびっくりしたような顔だった。



「とにかく、皆、家の中へ…」

おばあさんはそう言って、私の背中を押した。
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