替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




『そりゃあ…おまえさんを守るためじゃろうな。』



その晩はなかなか寝付けなかった。
なんとか眠ろうと思って、固く目を閉じても、おばあさんに言われた言葉が何度も頭に浮かび上がった。



どういうことだろう?
私を守るために、異界に送ったなんて…
しかも、22年間も私は異界にいたんだ。



両親のことを思い出すと、二人は多分、私がこっちの世界に戻ることは想定してなかったんじゃないかって思う。
なのに、私は呼び戻された。



万一、私が王族だとしたら、国になにかの問題が発生して、それで私が必要になったってこと…?



確かに、お父さんは『運命』という大袈裟な言葉を使った。
でも、私が本当に王族だったら…大袈裟でもないかもしれない。
もしも、国の一大事を救うために、呼び戻されたのだとしたら…それは、まさに『運命』だもんね。



だけど、いまだに実感がわかない。
王族なんて、小説やらおとぎ話のものでしかなかった。
当然のことだけど、身近に王族なんていなかったもの。



あれこれ考えたら、大きな溜め息が出た。



私にそんなたいそうなことが出来るだろうか?
私はごく普通の生活をして来た庶民なのに…
考えれば考える程、心は重くなり…なのに瞼は重くならない。
結局、朝が来るまで、私は一睡も出来なかった。
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