替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「ただいま!」

あまりに機嫌が良くて、妙にデカい声を出してしまった。
いくらカンの良いお母さんでも、まさか今日の出来事を知るはずがない。
そんなことはわかっていながらも、なんとなく恥ずかしくて、お母さんの顔がまともに見られなかった。



「おかえりなさい。」

どこか元気がないような気はしたけれど、特に気にすることもなく、私は自分の部屋に向かった。



お風呂に入り、部屋着に着換えて…
何度も何度も、小林さんからのメモのことが思い出されて、頬が緩んでしまう。
これからごはんだっていうのに、こんなににたにたしていたら、両親におかしいと思われてしまう。
私は、鏡に向かって真面目な顔を作る。
いや、こんなに硬い表情はいらない。
却って不自然だ。
いつも通り…リラックス、リラックス!



キッチンに行くと、もうご飯の準備が出来ていた。
私が両親の異変に気が付いたのはその時だった。



いつも他愛ない話題で笑いながら食べるのに、お父さんもお母さんもほとんど笑わないどころか、喋りもしない。



「あれ?今日は二人共どうしたの?」

「……どうもしてない。」

お父さんはそう言ったけど、その時、お母さんが急に泣き出して…



「お母さん、どうしたの!?」

私はとにかくびっくりして…
だって、お母さんがこんなに泣いたところなんて、見たことがなかったから。
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