替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
箱の前で、マリウスさんは再び立ち止まった。



マリウスさんは、今、何を考えているのだろう?
この箱に入ってるのは、本当にガザン王の剣だろうか?



「マリウス……」

フェルナンさんにランプを手渡し、フェルナンさんは、ランプの明かりを箱の方へ向けた。
マリウスさんがゆっくりと箱の蓋に手をかけた。
意外にも、鍵のようなものは見当たらない。



「……剣だ。」

箱の中に横たわっていたのは、まさしく剣だった。
でも、王様の剣にしては地味な印象だ。
鞘には宝石も付いてないし、紋章のようなものが刻まれているだけだ。



マリウスさんは、その剣を恭しく箱から取り出し、束に手をかけた。



「あ!」



何の抵抗もなく、鞘から剣が簡単に引き抜かれたと思ったら、目を開けられていない程の光が、その場所に広がった。
ここに来た時のことが脳裏をかすめ、自然と体が震え始めた。



怖い…とにかく無性に怖い…
私は、フェルナンさんの腕にしがみついた。



しばらくすると、その光は徐々に弱まっていき…
やがてすっかり鎮まって、私もようやく落ち着いた。



「マリウス!」

フェルナンさんが、マリウスさんを感極まった様子で抱き締めた。



「あぁ……」



マリウスさんも感動してるのか、言葉が出ないようだ。
私にもその感動が感染した。
なんだか、涙がこみあげて来る。
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