替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「おい、あれ……」



タリムさんの家を出て、またあの森を通っていた時…
私達は先日の男をみつけた。
あの時のことが思い出されて怖くなり、私は男から目を逸らした。



「これを……」

ガザン王の剣を私に押し付けると、マリウスさんは男に向かって駆け出した。
フェルナンさんもその後に続く。
二人共、何をする気なの?
私は、関わりたくなかったけれど、ひとりでいるのも心細いから、仕方なく同じように駆け出した。



男は、マリウスさん達に気付いて逃げ出そうとしたけれど、途中でつまづいて転び、二人に追いつかれてしまった。



「離せ!」

男は手足をめちゃめちゃに動かした。



「そう暴れるな!
俺達はあんたに危害を与えるつもりはない。」

「……え?」

「食料がないんだろう?
わけてやるよ。」

「ほ、本当か!?」

「嘘なんか吐かないさ。」



男は、ようやくおとなしくなった。
近くで見ると、意外にもまだ若い男だったけど、ずいぶんと痩せてやつれている感じだ。
もしかしたら、この森で長い間迷ってたのか迷ってたのかもしれない。
そう思うと確かに可哀想だとは思うのだけど…



「あっ!そ、それは…!」



男が私の持ってた剣を見て、目を大きく見開いた。
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