命の手紙
俺はなぜかムカついて、不安になって、灰原に最低なことを言いそうになった。

『お前、あと少ししか生きられないのに無理だろ。小説家なんて簡単になれるもんじゃないだろ』

そんなことを考えている自分が嫌だ。俺は何でこんなことを考えてるんだろう。

「ねえ、夏休みになったらもっといろんなところに行こうよ!やりたいこといっぱいあるんだ」

こんな汚いことを考えているとは知らず、灰原はいつもの明るい笑顔を向ける。

「いろんなところってどこ行くんだよ?」

「それはお楽しみ!」

灰原はかばんを持った。

「もう帰るのか?」

「違うよ〜。駅前にできたアイスクリームのお店に行くんだよ!」

そう言いながら、灰原は俺の手を取る。

「おい、まさか……」

「一緒に行こう!」

俺はズルズルと灰原に引きずられていった。



夏休み、灰原は本当に俺をいろんなところに連れ回した。

「ロックが飛び出す 君が笑う ノウバディー……ここ歌えない!光、歌って!!」

「英語のところを俺に歌わせるな!しかもこの歌は聞いたことがない!」

カラオケで六時間も歌ったり。
< 14 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop