命の手紙
灰原が明るく話したりするたびに、疑問になっていたことだ。

病気の発作はあの時しか見ていない。何も知らない人が見たら、どこにでもいる普通の高校生だ。命があと少ししかないようには全く見えない。

灰原は少し考えたあと、口を開いた。

「……人はいつか必ず死ぬ。だから怖がったりしないよ」

珍しく灰原は真面目な顔だ。

「長い人生が幸せとは限らない。大切なのは最後まで懸命に生きること。……そう私は思うよ」

灰原はそう言って、笑う。その笑顔は儚くて今にも消えてしまいそうだった。

次の日会った時、灰原はいつも通りだった。

「よかったら、私の学校の文化祭に来てよ」

そう言い、パンフレットを俺に押し付ける。

いつも通りになったことで、俺は少し安心していた。真面目な顔を灰原がすると不安になる。目の前から消えてしまいそうで、怖くなる。

「そうそう!この本おもしろいよ」

俺は灰原の言葉に耳を傾けた。
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