命の手紙
バレンタイン当日、灰原は手作りのチョコをくれた。



「光!誕生日おめでとう!!」

三月十五日、俺の誕生日。

一度言っただけなのに、灰原は覚えていた。

「これプレゼント!」

灰原は一冊の本と、花束を俺に渡した。見たことがない赤い花だ。

「この花は……?」

灰原が嬉しそうな顔を見せる。

「この花はアネモネ!花言葉は私からの友達メッセージだから、あとでちゃんと調べてね〜」

「はいはい。時間があったらな」

そう言っても、灰原は嬉しそうなままだ。

「じゃあ、今日はもう帰るね」

そう言い、灰原は立ち上がる。まだここに来て三十分も経っていない。

「えっ?もう帰るのかよ」

「今日はちょっと用事があるんだ」

灰原が早く帰るのは初めてで、俺は不安になる。歩いていく背中に言った。

「ありがとう…!!」

灰原が振り向く。その顔はとてもきれいで、儚くて、抱きしめたくなる。
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