命の手紙
「喜んでもらえたら嬉しい!その本、とってもすてきだから…!」

灰原が帰ったあと、俺はその本を読んだ。ページをめくるたびに、泣いた。灰原に出会う前の俺だったら、きっと綺麗事だと言っていたかもしれない。でもそんなことどうでもよかった。

灰原がくれたのは『命』という本だ。いろんな小説家が同じ『命』をテーマに書いた短編集だ。

あっという間に読み終わり、泣きながら灰原に電話をした。

『灰原、ありがとう!とてもよかった』

『おっ、おお〜!光が珍しく素直だ〜』

『生きていてよかった。本当にありがとう』

心の底からそう思っていた。絶望の中で灰原は希望を与えてくれたのだからーーー。

しばらく話したあと、俺は電話を切った。それが灰原と最後に話した瞬間だった。

ーーーその日の夜、灰原は天国へ旅立った。



灰原の葬儀に俺も出席することになった。

葬儀に行ってあいつの嘘を知った。

発作を起こした時、あいつは長ければ三年生きられると言った。しかしそれは嘘だった。俺と出会った時、あいつはあと半年ほどしか生きられない体だった。

そう聞かされた時、俺の頭は真っ白になり、何も考えられなかった。まるで灰原が死んだと聞かされた時のようにーーー。
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