命の手紙
葬儀が終わったあと、俺は灰原のお母さんに呼び止められた。

「光くん、渡したいものがあるの」

そう言われ渡されたのは、手紙だった。

「……あの子が書いていた手紙。机の中にしまってあったの」

俺は震える手で手紙を見た。


『光へ
本当は自分の口で言いたいし、あなたから
答えを聞きたい。でも、それが叶わなかっ
た時のために手紙を書くね。
私はずっと苦しかった。誰にも病気のこと
を怖くて誰にも言えなかった。言ってしま
ったらみんな離れて行っちゃうと思って言
えなかった。話せたのは、あなただけだっ
た。
死ぬことも本当は怖かった。あなたの前で
は強がったけど、いつ死ぬかわからなくて
怖かった。
でも、光はずっとそばにいてくれた。私の
秘密を知っても変わらない態度で接してく
れて、それが何より嬉しかった。本当にあ
りがとう。
いつのまにか、あなたを好きになってた。
この想いはずっと隠さなきゃいけないって
思ってた。でも知っておいてほしい、忘れ
ないでほしいという気持ちの方が、大きか
った。だから、伝えます。
赤いアネモネの花言葉は、『君を愛す』
私に奇跡をくれてありがとう。毎日が楽し
くて病気を忘れられた。
あなたに会えて幸せだった。だから、生き
て。あなたの人生を生き抜いて。
私はあなたがくれた奇跡を忘れません。
紫乃より』
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