命の手紙
灰原は胸を押さえて顔を歪めていた。俺は灰原の肩に手を置き、「おい!大丈夫かよ!」としか言えない。

しばらくすると、灰原は「驚かせちゃって、ごめんね」と言った。

俺は何も言えない。目の前で笑う女が、さっきまで苦しんでいたとは思えないほど落ち着いていて明るくしているからーーー。

「あのね……」

灰原は俺の手を取り、俺をまっすぐ見る。灰原の目は少し迷っているような、でも話さなければならないという強い意志があるように感じた。

「私…私は…長くてもあと三年ほどしか生きられないの……」

突然のそんな告白に、ますます言葉が消えていく。三年ほどしか生きられない?灰原が?

「……嘘、だろ?」

やっと出た言葉は、いつもよりずっと小さかった。灰原は優しく微笑む。

「本当だよ。生まれつき持病を持ってるの。私が生まれた時、『長くは生きられないだろう』ってお医者さんに言われたんだって」

まるで、他人事のように灰原は言った。
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