半人前霊能者シリーズ ② 紡がれる力
***
「何だい、辛気臭い顔して。疲れ果てたサラリーマンみたいだよ」
帰宅した俺に向かって、相変わらず辛辣な言葉を吐く母親。
「うっさいなぁ、もう」
鬼ババのクセにと内心思いながら目の前を通り過ぎようとしたら、頭の上に何かを乗せられた。
(こんなところに、物を乗せるなよ……)
「ん? 饅頭?」
「3時のオヤツだよ。遠慮せずに食べな」
「……しかも、ちゃっかり賞味期限がきれてるけど」
渋い顔して、饅頭の裏側に記載されている日付を母親の顔に向けてやると、何を言ってんだいとカラカラ笑った。
「大丈夫さね。1日くらい過ぎてたって、腹は壊しゃしないから。お昼のデザートに食べたけど、あたしのお腹は受けつけてくれたよ」
「いらん」
「ああ、可哀想に! せっかく仏壇にお供えしたものをあり難く戴かないなんて、そんな息子に育てた覚えはなくってよ」
下手っくそな演技で泣き崩れる母親に、呆れ果てるしかない。
学校は学校で例の問題のせいで頭が痛いというのに、自宅ではコレだもんな、まったく。
「分ったよ、食べるから」
饅頭をテーブルに置き、台所で手を洗ってから椅子に座った。目の前にはウキウキ顔の母親が不機嫌な息子を見て、小首を傾げる。
「そんでお前、どうしたんだい? また、キレイな女の子に恋しちゃったとか? 残念なことに幽霊だったんだろ」
「その方が早く解決するだろうね。事態はもっと最悪だよ」
眉間にシワを寄せて饅頭を頬張ったら、自動的に温かいお茶を出してくれた。
「最悪な事態?」
「そうだよ。学祭のクラスの出し物で、俺の霊能力を使おうってことになっちゃってさ」
「そりゃ面白そうだね。たくさんの悪霊を引き連れて、あたしが行ってやろうか?」
息子に試練を与えることを、嬉々としている母親である。言ったことを実践しそうで、非常に怖い。
「対処ができないのを分ってるクセに、酷いこと言うなよ」
「まぁまぁ。半人前のお前に、ピッタリな企画じゃないか。何が嫌なんだい?」
「その半人前の中途半端具合を、クラスの奴らが分ってないからさ。何かあったら、どうするんだろうって」
その何かあったときのことを考えて、クラスの奴らに分かるように説明をしたのだ。そしたら――。
「ただ幽霊が憑いてるかどうか、視るだけになったんだ。それにプラスしてタブレットのアプリで、占いもやってみようってことになった」
経費削減もいいトコだ。こんなので、本当に人が集まるんだろうか。
「何はともあれ、経験を積むしかないからね。いい修行じゃないか、頑張りな」
宥めるように頭を撫でてくれる母親に、うんざりするしかない俺。いろんな不安を抱えながら、当日を迎えたのだった。
「何だい、辛気臭い顔して。疲れ果てたサラリーマンみたいだよ」
帰宅した俺に向かって、相変わらず辛辣な言葉を吐く母親。
「うっさいなぁ、もう」
鬼ババのクセにと内心思いながら目の前を通り過ぎようとしたら、頭の上に何かを乗せられた。
(こんなところに、物を乗せるなよ……)
「ん? 饅頭?」
「3時のオヤツだよ。遠慮せずに食べな」
「……しかも、ちゃっかり賞味期限がきれてるけど」
渋い顔して、饅頭の裏側に記載されている日付を母親の顔に向けてやると、何を言ってんだいとカラカラ笑った。
「大丈夫さね。1日くらい過ぎてたって、腹は壊しゃしないから。お昼のデザートに食べたけど、あたしのお腹は受けつけてくれたよ」
「いらん」
「ああ、可哀想に! せっかく仏壇にお供えしたものをあり難く戴かないなんて、そんな息子に育てた覚えはなくってよ」
下手っくそな演技で泣き崩れる母親に、呆れ果てるしかない。
学校は学校で例の問題のせいで頭が痛いというのに、自宅ではコレだもんな、まったく。
「分ったよ、食べるから」
饅頭をテーブルに置き、台所で手を洗ってから椅子に座った。目の前にはウキウキ顔の母親が不機嫌な息子を見て、小首を傾げる。
「そんでお前、どうしたんだい? また、キレイな女の子に恋しちゃったとか? 残念なことに幽霊だったんだろ」
「その方が早く解決するだろうね。事態はもっと最悪だよ」
眉間にシワを寄せて饅頭を頬張ったら、自動的に温かいお茶を出してくれた。
「最悪な事態?」
「そうだよ。学祭のクラスの出し物で、俺の霊能力を使おうってことになっちゃってさ」
「そりゃ面白そうだね。たくさんの悪霊を引き連れて、あたしが行ってやろうか?」
息子に試練を与えることを、嬉々としている母親である。言ったことを実践しそうで、非常に怖い。
「対処ができないのを分ってるクセに、酷いこと言うなよ」
「まぁまぁ。半人前のお前に、ピッタリな企画じゃないか。何が嫌なんだい?」
「その半人前の中途半端具合を、クラスの奴らが分ってないからさ。何かあったら、どうするんだろうって」
その何かあったときのことを考えて、クラスの奴らに分かるように説明をしたのだ。そしたら――。
「ただ幽霊が憑いてるかどうか、視るだけになったんだ。それにプラスしてタブレットのアプリで、占いもやってみようってことになった」
経費削減もいいトコだ。こんなので、本当に人が集まるんだろうか。
「何はともあれ、経験を積むしかないからね。いい修行じゃないか、頑張りな」
宥めるように頭を撫でてくれる母親に、うんざりするしかない俺。いろんな不安を抱えながら、当日を迎えたのだった。