大天使に聖なる口づけを
特別にアウレディオの応援をしていたわけではないエミリアも、最後の試合にだけは熱が入った。
なんと言っても、男の子が一丸となって、アウレディオと戦っている相手の男の子を援護するのである。

審判の目を盗んで何かを投げたりするのはもちろん、アウレディオの私物を壊したり、わざとアウレディオに見える位置で、彼が大切に育てた花を折ったり。

目に余る行為にもアウレディオは良く耐えて、目の前の試合に集中しようとしていたが、見ているエミリアのほうが、先に限界に達した。

「ちょっと、いいかげんにしなさいよあなたたち! ディオ! あなたも何とか言ったらどうなの、ディオ!」
エミリアが大きく息を吸いこみ、お腹に力を入れてアウレディオの名前を呼んだ途端、ピタリと全ての人物の動きが止まった。

驚いてしばらくはキョロキョロとしていたアウレディオだったが、自分以外の誰も動かないことを確認すると、試合の邪魔になりそうな物を全て、さっさとその場から撤去した。
試合はそのあと、あっさりとアウレディオが勝った。
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