大天使に聖なる口づけを
「あまりにも信じられない出来事だったんで、すっかり記憶の中で消去しちゃってた!」
エミリアの叫びに、アウレディオはふうっとため息を吐いた。

その対応にエミリアは少なからずムッとする。
「だってディオったら、あのあと何も言わなかったじゃない……私はてっきり夢でも見たんだと思って……ディオの勝利だって、てっきり実力だって……」

「もちろん実力だよ。本来あるはずのない妨害を排除しただけなんだから、お前の『天使の時間泥棒』の恩恵なんて微々たるものだ」

「なんですって! だったらどうして騎士見習いにならなかったのよ。お誘いだってあちこちの街から来てたのに! 変なの!」

「変なのって、お前……俺は庭師になりたいって昔から言ってただろ? お前だってよく知ってるくせに……」

「だって!」
売り言葉に買い言葉で止まらなくなってしまった。
エミリアはこれまで口にしたことのなかった本音を、ついアウレディオにぶつけてしまう。
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