大天使に聖なる口づけを
見物人の頭だらけで、二人の姿がよく見えないぐらいがちょうどよかった。
そうでなければエミリアは、自分がこれまで誰を見てきたのか。
いつも誰を捜しているのか。
知りたくなかった結論に、きっとたどり着いてしまう。
(そんなの嫌だ……)
自覚のあとに待っている別離が見え隠れして、とても素直に受け入れることなどできない。
ガキンと大きな音がして、人垣の向こうでワッと歓声が起こる。
どちらかの剣が折れたらしかった。
気になりながらも動くことのできないエミリアに、
「アルフレッドが優位に立ったみたいよ」
フィオナが聞きたかったような聞きたくなかったような情報を、知らせてくれる。
エミリアは両手をぎゅっと握りしめた。
(ディオ!)
思わず呼ばずにいられない名前を、心の中だけに押し留める。
フィオナがそんなエミリアの肩に手を置いて囁いた。
「アルフレッドが優位だっていうのに、あんまり嬉しくなさそうね」
ドキリとしたエミリアは慌てて、
「そんなことないよ」
と生返事した。
けれどそんな上っ面の返事はフィオナには通用しない。
じっとエミリアの周りの空間に視線を向けながら、
「そんなにアウレディオが気になる?」
とフィオナが呟いた一言が、エミリアの心に刺さった。
そうでなければエミリアは、自分がこれまで誰を見てきたのか。
いつも誰を捜しているのか。
知りたくなかった結論に、きっとたどり着いてしまう。
(そんなの嫌だ……)
自覚のあとに待っている別離が見え隠れして、とても素直に受け入れることなどできない。
ガキンと大きな音がして、人垣の向こうでワッと歓声が起こる。
どちらかの剣が折れたらしかった。
気になりながらも動くことのできないエミリアに、
「アルフレッドが優位に立ったみたいよ」
フィオナが聞きたかったような聞きたくなかったような情報を、知らせてくれる。
エミリアは両手をぎゅっと握りしめた。
(ディオ!)
思わず呼ばずにいられない名前を、心の中だけに押し留める。
フィオナがそんなエミリアの肩に手を置いて囁いた。
「アルフレッドが優位だっていうのに、あんまり嬉しくなさそうね」
ドキリとしたエミリアは慌てて、
「そんなことないよ」
と生返事した。
けれどそんな上っ面の返事はフィオナには通用しない。
じっとエミリアの周りの空間に視線を向けながら、
「そんなにアウレディオが気になる?」
とフィオナが呟いた一言が、エミリアの心に刺さった。