大天使に聖なる口づけを
倒れたエミリアを抱き止めてくれたのは、やはりアウレディオだったらしい。
ちょうどアルフレッドの喉元に、折れた剣の先を突きつけた直後、エミリアの元へと走りこんできた。
地面に倒れる寸前のエミリアを、文字どおり身を呈して、滑りこんで助けた。

周りにいた観客たちは突然の出来事に大騒ぎだったし、そのあとすぐアルフレッドも走りこんできたので、騒ぎはいっそう拡大した。

アルフレッドはエミリアを、自分が医務室まで運ぶと言いはったらしいが、アウレディオにしがみついたエミリアが、どうあっても腕を解かなかったので、そのままアウレディオが運ぶことになった。

「あんなに遠いところから、それも試合中に、隣にいた私よりも先にエミリアの変化に気づいたのよ。二人とも異常だわ」
フィオナの呟きになんと答えていいのかわからず、エミリアは黙りこむ。
あまり居心地のいいものではない静寂は、医務室の扉がトントンと叩かれたことで破られた。

用があるからと部屋を出て行った医師と入れ替わるようにして、入ってきたのはアルフレッドだった。

「私もちょっと席を外すわ」
気を利かせたつもりのフィオナがいなくなって、部屋の中はエミリアとアルフレッドの二人きりになる。

けれどエミリアの目は、垣間見えた扉の向こうの廊下に、淡い金髪の人物が佇んでいることを見逃しはしなかった。
< 155 / 174 >

この作品をシェア

pagetop