大天使に聖なる口づけを
「あ―あ、ファーストキスが最後のキスか」

あまりにも照れくさくて冗談のように冷やかしてみたのに、アウレディオは真顔で囁いた。
「安心しろ、俺もお前も二回目だよ。一回目は十年も前に、やっぱりここでしただろう?」

妖しく瞳を煌かされて、エミリアは思わず悲鳴をあげた。
「ええええええっ!」

今度こそ正真正銘、エミリアは開いた口が塞がらなかった。

「どうして……? ねえどうして私って、こんなに忘れっぽいの!」
「だから、俺のことなんてすぐに忘れるって言ってるだろ」

至極魅力的な笑顔とは裏腹なその言葉だけは、絶対に認めたくなかった。
これから先、たとえどんなことがあったとしても――。

「エミリア……目を閉じて」
アウレディオがそっと伸ばした冷たい指先で、エミリアの頬に触れた。

けれどエミリアは、言われたとおりに目を閉じたりはしなかった。

「閉じろって」
綺麗な瞳をすぐ近くまで近づけながら、アウレディオは怒ったように呟く。

けれどその顔をしっかりと見返したまま、エミリアは果敢に言い返した。
「そんなことしたら、ディオの顔が見えなくなっちゃうじゃない。目を瞑ってる間にいなくなっちゃったらどうしてくれるのよ。そんなの……私は絶対に嫌なんだから!」

アウレディオは、そんなエミリアの怒った顔でさえ愛しくてたまらないというように目を細めて笑った。
「それは……俺も嫌だ」

そして両手で頬を包みこむようにして首を傾げて、宝物のように優しくエミリアに口づけた。
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