大天使に聖なる口づけを
アマンダがおおらかであまり口うるさくないという理由だけで、フィオナはこの店で働くことを決めた。
針仕事が好きなエミリアも、勤め先を選ぶ際、リンデンに何件もある仕立て屋の中で敢えてこの店を選んだのは、フィオナと一緒だからという理由も大きい。
とっつきにくく、近寄りがたいと言われるフィオナだが、昔からエミリアに対してだけは優しかった。
「なに? どうかしたエミリア? オーラの色が変よ?」
ぼうっとフィオナの手元を見たまま考えごとをしていたエミリアは、弾かれたようにハッと再び手を動かし始めた。
「ううん、なんでも……ちょっといろんなことを思い出してただけ……」
「そう?」
手は作業を続行しつつ、いまだにエミリアの顔を凝視し続けるフィオナには、隠しごとはできない。
なぜなら彼女には不思議な特技があるのだ。
さっき本人が口にしたとおり、人間の肉体の周りに放出される霊気の塊――オーラから、相手の人柄や行動、今の精神状態まで分析してしまう。
気味が悪いと敬遠する者も多いが、フィオナはそんな非難の言葉にはまったく動じない。
『構わないわ。あんな色のオーラの人と、友だちでいたいわけでもない』
あっさりと切って捨てる潔さは、エミリアにとってうらやましくもあり、残念でもあった。
(フィオナは本当に魅力的なんだから、自分から遠ざけたりしなければきっともっとたくさん友だちだってできてるはずなのに……)
エミリアが今心の中で考えていることも、きっとフィオナには全てお見とおしだろう。
その証拠に、黒い瞳を瞬かせて、「別にいいの。あなたがいるから」と、小さな頃から何度も聞かされた言葉を口にする時のような、優しい顔をしている。
針仕事が好きなエミリアも、勤め先を選ぶ際、リンデンに何件もある仕立て屋の中で敢えてこの店を選んだのは、フィオナと一緒だからという理由も大きい。
とっつきにくく、近寄りがたいと言われるフィオナだが、昔からエミリアに対してだけは優しかった。
「なに? どうかしたエミリア? オーラの色が変よ?」
ぼうっとフィオナの手元を見たまま考えごとをしていたエミリアは、弾かれたようにハッと再び手を動かし始めた。
「ううん、なんでも……ちょっといろんなことを思い出してただけ……」
「そう?」
手は作業を続行しつつ、いまだにエミリアの顔を凝視し続けるフィオナには、隠しごとはできない。
なぜなら彼女には不思議な特技があるのだ。
さっき本人が口にしたとおり、人間の肉体の周りに放出される霊気の塊――オーラから、相手の人柄や行動、今の精神状態まで分析してしまう。
気味が悪いと敬遠する者も多いが、フィオナはそんな非難の言葉にはまったく動じない。
『構わないわ。あんな色のオーラの人と、友だちでいたいわけでもない』
あっさりと切って捨てる潔さは、エミリアにとってうらやましくもあり、残念でもあった。
(フィオナは本当に魅力的なんだから、自分から遠ざけたりしなければきっともっとたくさん友だちだってできてるはずなのに……)
エミリアが今心の中で考えていることも、きっとフィオナには全てお見とおしだろう。
その証拠に、黒い瞳を瞬かせて、「別にいいの。あなたがいるから」と、小さな頃から何度も聞かされた言葉を口にする時のような、優しい顔をしている。