大天使に聖なる口づけを
「お母さん! ……さっきのことなんだけどね!」

パッと花咲くように笑った母は、エミリアに向かって心持ち体を乗りだし、その先をどうぞと言わんばかりにこくこくと頷く。

「あの、あのう……そのね……」
しかしその先何と言っていいのかが、エミリアにもわからない。

(まさか自分を生んでくれた母親に向かって、「お母さんって、天使なの?」はないでしょう……)
だからといって、他に何と聞いたらいいのだろう。

(こういう時こそ、ディオが助け舟を出してくれるといいんだけど……)

隣に座るアウレディオに視線を向けてみても、さっきからずっと知らん顔して紅茶を飲んでいるだけ。

(もうっ!)
当てにならない幼馴染にはさっさと見切りをつけて、エミリアはなんとか自分で、当り障りのない言葉を探しだした。

「さっきの羽……ほんものなの?」
母は宝石のように綺麗な翠色の瞳を真っ直ぐにエミリアに向けたまま、こっくりと頷いた。

「お母さんの背中から生えてるの?」
またもこっくり。

「それって……お母さんは人間じゃないってこと?」
母はもう一度しっかりと頷き返してくれたが、その笑顔はどことなく寂しそうにも見えた。
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