大天使に聖なる口づけを
(仕事がうまくいったら、お母さんとずっと一緒に居られるかもしれない!)

その事実だけが、すっかり心を支配してしまっていた。
だから母の話の続きも待たず、勢いこんで申し出る。

「お母さん、私手伝うよ。お母さんのその仕事ってやつ、私も手伝う!」

母は少しホッとしたように、けれどもなぜだか少し辛そうに、エミリアの顔を見つめた。

「ありがとう……本当はこの仕事、エミリアの協力がないとこできないことなの……」
「え? ……私? ……だったら私にお母さんが天使だってばれなかったら……いったいどうするつもりだったの……?」

「ふふっ、それもそうね……」
「何ー? 変なの。本当に大丈夫なの?」

笑いながら首を傾げるエミリアにあわせて、母も笑った。
しかしその時の母の実際の胸中は、とても笑えるようなものではなかった。

(エミリア、ごめんなさい……)
この先とんでもない使命を負わせることになる娘への、懺悔の思いでいっぱいだったのだった。
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