大天使に聖なる口づけを
「諸君、ご協力に感謝する。簡単な手続きが済んだら、警備を担当してもらう地域に案内するので、係りの者のあとについて行ってくれ」
ランドルフの言葉に従って、三人の近衛騎士が前に進み出た。

(なあんだ、全員がランドルフ様の担当ってわけじゃないのね……)
がっくりと拍子抜けしたエミリアだったが、それよりも先に心配しなければならないことに、はたと思い当たった。

(手続きってことは……やっぱり身元調査や身体検査みたいなことがあるんじゃないの? どうするのよ!)

ところが同じように困る立場のはずのフィオナは、いつもどおり実に落ち着いた態度で平然としている。

「何の問題もない。全然大丈夫だ」
再び隣で囁かれたアウレディオの声に、エミリアはこぶしを握りしめた。

(大丈夫なわけないでしょう! ……ディオったら絶対に面白がってる!)

しかし実際にアウレディオの言った通り、何の問題も起こらなかった。

口頭で簡単な身元調査をおこなった役人は、エミリアが女ではないかと疑うようなことはまったくなく、むしろチラチラとアウレディオばかりを気にしていた。

(そうですか。ディオのほうが見目麗しくて、私よりもよっぽど気になるってわけね……!)

わかりきっているはずのことを改めて再確認させられて、エミリアは落ちこみを通り越して開き直った。
< 50 / 174 >

この作品をシェア

pagetop