大天使に聖なる口づけを
カラーン、カラーン、カラーン。

朝を告げる教会の鐘が、白み始めたリンデンの街に鳴り響く。
教会の前の広場で羽を休めていた鳩たちが、いっせいに空へと飛びたった。

薄紫の空の下、鐘の音と共に人々は寝床から起きだし、新しい一日を開始する。

それは街の外れの住宅街にある家で、父と二人きりで暮らすエミリアにとっても同様だった。

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